A gut-derived metabolite alters brain activity and anxiety behaviour in mice Nature 2022. 02.14
腸内細菌は、脳細胞の形までも変える力があるようです。
4-EPS(4-エチルフェニルサルフェート)という物質が人間の心理行動面に影響を与えるということはもともと分かっていたのですが、今回のこの研究では、筆者らは4-EP(4EPSの前駆物質)を産生する腸内細菌に注目して、これを遺伝子操作し、4-EPを恣意的に増やしたマウスと、全く産生しないマウスを作成し、不安行動について観察したところ、恣意的に増加させたマウスで有意に不安行動が増加したことを確認しました。
また、さらに一歩踏み込んで、それらマウスの脳細胞を観察し、その結果、4-EPを産生過多にしたマウスでは脳細胞の形や性状が変化していたことを確認しました。
更にここで止まらず、もう一歩踏み込んで、この研究グループは人を対象とした実験に進んでおり、4-EPSの抑える飲み薬を開発し、それを人に服用させて、不安や過敏性を軽減させることを確認しています。
この論文は、
①4-EPSを除去すると不安が軽減されるということを判明したこと、
②腸内細菌がその代謝物を通じて脳細胞に構造変化を引き起こしていることを明らかにしたこと、
③4-EPSを抑制する飲み薬を人に対して実験し良い結果を得たということ、
以上の3点のすごい結果を揃えていて、これからの精神科治療を急速に大きく展開させる分岐点になりそうな論文です。