以前、メトホルミンというありふれた糖尿病薬がダイエット治療薬になるかもしれないという話をしましたが、またもやメトホルミンの意外な作用について調べた論文がNature Medicineという雑誌に報告されていました。
Assessment of cognitive and neural recovery in survivors of pediatric brain tumors in a pilot clinical trial using metformin
タイトルを訳すと、「小児脳腫瘍の生存者において、メトホルミンを使用したパイロット臨床治験での認知機能と神経細胞の回復の評価」というものです。この研究では小児期に脳腫瘍によって放射線治療を余儀なくされる患者さんを対象にしています。放射線治療は癌細胞だけではなく正常な細胞も破壊してしまうことは仕方がないことで、それによって脳細胞が減少し、脳に関係した後遺症が残ってしまうというのが現状ですが、メトホルミンによってその後遺症を抑えることが出来るかもしれないという内容でした。筆者らは、まずマウスの幹細胞を使って試験管内で検証して、有効性を確認し、その後実際の小児の患者さんで更なる検証を行ったところ、照射直後から服薬すると、神経幹細胞機能に影響を与えて、その結果記憶障害を抑止する効果があるという結果が得られたということでした。小児期という神経幹細胞が活発な時期だからこそなのかもしれませんが、成人期にも神経細胞への分化が継続的に行われていることを考えると、ひょっとすると認知機能の低下を防ぐ可能性もある??ちょっとこれは飛躍してしまいましたが、古典的な糖尿病の薬が神経幹細胞の回復に影響を与えているという点だけでも面白い発想だと思いました。