APOE(アポリポタンパク質E遺伝子タイプ)は4つの型があって、その中でヒトはε2, ε3, ε4のどれか二つをもっていますが、APOE ε4を1つ持っているとアルツハイマー型認知症になるリスクが3〜4倍くらいになり、2つ揃って持っていると15倍のリスクがあるとして、認知症のリスク遺伝子として知られています。しかし、どこがどうなって認知症になるということはまだあまり知られていませんでした。
この論文で筆者らは、ε3をもつ人とε4をもつ人を集めて、脳血液関門が壊れていないかを造影剤を用いたMRI検査を行なって調べたところ、ε4をもつ人だけ、不思議なことに海馬と海馬傍回と呼ばれる箇所でだけ、造影剤の漏れがある事がわかったという至極単純な実験で期待通りの結果が得られたという事でした。この漏れが海馬の萎縮につながり、結果的に認知機能低下と相関することは明らかなようですが、Tauタンパクの蓄積がみられないことなどから、APOE4関連の認知症は、これまで考えられてきた従来の機序とは異なる漏出病のような病態が根底にあるかもしれません。