記事:降圧剤に抗うつ効果あり

Angiotensin-converting enzyme gates brain circuit–specific plasticity via an endogenous opioid

2022.02 Science

一般的に使われている降圧剤の中のACE阻害薬にうつ病の改善効果と社交不安を改善させる効能がある

ずっと以前から(降圧剤)が不安症状を緩和させることは知られており、βブロッカーが不安症の治療に用いられてきていました。この事実から、こころ(心血管)とこころ(精神)は密接な関係があるということは分かっていました。なので、このACE阻害薬で抗うつ効果があるという事実も無理なく受け入れられましたが、その過程、理由に少々驚きを覚えました。

この論文で、筆者たちはACE阻害薬が抗うつ効果を持つことを示し、さらにACE阻害薬がどのようにして抗うつ効果を導いているのか調べました。結果として、ACE阻害薬が依存性のない脳内麻薬エンケファリンの分解を妨げていることで、エンケファリン濃度が増加して、それが気分の改善を導いているというのです。さらに、マウスの実験では社交性が向上したとの結果も示しており、社交不安障害の治療可能性をも示唆しています。こういった既存薬再開発、いわゆるドラッグリポジショニングは副作用の調査が既に完了しているため早期の治療応用(しかも異なった作用機序の)が期待できます。