記事:サイケデリックPTSD治療

  Science誌が毎年発表しているブレイクスルーオブジイヤーTop10ですが、その年の際立って可能性がある論文を全ての科学誌の中から10厳選するという毎年恒例の記事なんですけれども、2021年5月にNature Medicineに掲載された外傷後ストレス障害に対するMDMAの治療可能性について検証された論文が含まれていました。

MDMAとはご存知の方もおられるかもしれませんが、一般的にエクスタシーと呼ばれる3,4-メチレンジオキシメタンフェタミンという物質で、違法な、いわゆる裏社会で流通されている快楽ドラッグで大麻と違って医療用のものはまだありません。このような危ないものを実際に被験者に与えて検証するなんてことは、まず日本では倫理委員会で通ることはないし、あり得ないことでしょう。それをやってのける国があるのが驚きですが、対照群と比較したところ、MDMA群では67%がPTSDの改善が認められ、プラセボ群の32%と比べて有意に改善したということでした。治験参加者は76人で、もちろんMDMAが投与される可能性があることは事前に織り込み済みでしょうし、参加者もある程度MDMAに何らかの期待を持ちながら参加している可能性があることも十分に考えられます。また、依存性の問題もあることから、この結果を全てポジティブに受け止めることは現時点では出来ませんが、以前紹介したサイロシビンの抗うつ効果も含めて、麻薬と呼ばれるものが精神医療に今後大きな変革を起こすことは確かなようです。