記事:くしゃみ反射の回路

Sneezing reflex is mediated by a peptidergic pathway from nose to brainstem Cell 2021.07.08

くしゃみや咳はそもそも異物を認識して体外に排出するという高等生物に備わっている防御機構ですが、コロナウイルスのような呼吸器系で増殖するウイルスはこれをうまく利用して自分たちの居場所を広げているという状況で、何だか弱みをうまく利用されているようで憎たらしく、こんな原始的な機構をまだ使わざるを得ない生物の進化の遅さが切なく思えます。

最近はコロナウイルスの影響で、公衆の面前でくしゃみや咳をすると、衆目を集めてしまうので、アレルギー性鼻炎や喘息の方の嘆きが多く聞かれます。

これまでくしゃみがどのような神経回路で発現しているのか正確にはわかっていませんでしたが、この論文ではどのような神経回路でくしゃみが出るのかを調べており、その中でニューロメジンBという脳神経ペプチドがくしゃみの信号を伝達していることをマウスで発見しています。ニューロメジンBの受け皿を除いたマウスではくしゃみ反射が起きないことも証明しており、くしゃみは呼吸器系の反応ではなく脳神経系の反応であることを明らかにしております。今後、ニューロメジンBの受容体活性を減弱させることがアレルギー性鼻炎のみならず、呼吸器系の感染症拡大を抑える良い方法になるかもしれません。