記事:認知機能低下を防ぐ?降圧剤

Blood-Brain Barrier Crossing Renin-Angiotensin Drugs and Cognition in the Elderly: A Meta-Analysis

Hypertension 2021. 6. 21

 収縮期血圧を120mmHg以下にコントロールすることが認知症の予防になることは以前から実証されていました。また、以前からアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が、認知機能の維持に効果的であることは報告されていたのですが、今回のこの論文は一歩踏み込んでいて、その中でもある特定の降圧剤が記憶力の低下を抑えることを示唆しています。

 筆者らは、降圧剤を使用している50歳以上の患者を対象とした対象患者の総計12,894人の研究データを集めて比較し、注意力、実行機能、言語力、言語記憶学習、想起、精神状態、処理速度といった7つの認知領域について分析した結果、脳血液関門を通過するACE阻害薬のカプトプリル、フォシノプリル(日本未承認)、リシノプリル、ペリンドプリル、ラミプリル(日本未承認)、トランドラプリル、ARBのテルミサルタンとカンデサルタンを使っていた患者は記憶力の低下が緩徐だったことを示しました。それらの薬剤は血圧低下作用だけでなく、副産物的な要素で認知機能維持が期待出来るということですが、認知症の予防治療になりうるかどうかはまだ未知で、タイトルは少し大袈裟です。