記事:新しい抗うつ薬の可能性

Psychedelic-inspired drug discovery using an engineered biosensor Cell 2021.5.13

現在うつ病に使われている薬の主流はセロトニン再取り込み薬やノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬ですが、約10年前から麻酔薬のケタミンやマジックマッシュルーム由来のサイロシビンにこれまでの抗うつ薬にはなかった即効性を併せ持つ抗うつ効果があるということが分かってきました。しかしながら、ケタミンには幻覚や依存性、サイロシビンには幻覚誘導作用があることが懸念されて、ケタミンはすでに欧米では使用できる状況にあるのに日本ではなかなか承認までも時間がかかりそうな状況です。確かに欧米の先生方にも依存性を懸念して使用を控える方もいらっしゃいます。

今回、この論文では、幻覚剤の特徴であるセロトニン2A受容体刺激作用による抗うつ効果を残しながら、これまで懸念事項であった幻覚作用がない化合物を作り出し、それがマウスの細胞レベルでは抗うつ効果を発揮するということを示しています。

これは非常に革新的な研究のように思われ、うつ病治療に新しい風を吹き込むと同時に、うつ病の病態解明がこの研究から派生して進んでいくような気がしています。